副鼻腔炎(蓄膿症)
「副鼻腔炎」は聞き慣れなくても、「蓄膿症(ちくのうしょう)」と聞くとイメージができる方も多いと思います。
鼻の周りの顔の骨の中には、頬・眉間・額・鼻の奥に、鼻腔と通じる空洞があります。
これらの空洞を総称して副鼻腔と呼びます。
副鼻腔の粘膜に起きた炎症が副鼻腔炎です。
炎症が起きると膿がたまることも多いので、かつては「蓄膿(ちくのう)症」とも言ったのです。
蓄膿症=手術というイメージが持たれがちですが、最近はお薬の進化によって、ほとんどが手術をせずに済みます。
急性副鼻腔炎
鼻かぜ(ウィルス感染)をきっかけに、細菌感染が副鼻腔にひろがって起こります。
最初は鼻水・鼻づまりだったのが、黄色いにおいのある(鼻がにおう)鼻汁になったり、鼻汁がのどへ流れる後鼻漏(こうびろう)が起き、痰のからんだ咳の原因となったりします。
さらにほお・眼・鼻の付け根・ひたいが痛むこともあります。
炎症が起こっている空洞の場所によって、痛みが出る場所が違うのです。
頭痛・頭が重い、においがよくわからない(嗅覚障害)などの症状が出ることもあります。
慢性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎から移行して、慢性副鼻腔炎になります。
原因としては、急性炎症が長引いたり(遷延化)、繰り返したり(反復)することによるほか、鼻の中の形(鼻中隔彎曲症など)・アレルギー性鼻炎・耐性菌(抗生剤が効きにくい菌)・栄養や生活環境などが関係していると考えられています。
症状は、鼻漏・後鼻漏・湿性咳嗽(鼻汁や痰がからむ咳)・鼻づまり・嗅覚障害などの鼻症状と、それに伴って現れる頭痛・頭重・注意力低下などがあります。
鼻汁は粘液性・粘膿性なのが一般的です。鼻づまりは持続性で両方に起きることが多いです。
また、鼻茸(鼻ポリープ)は、慢性副鼻腔炎に特徴的です。鼻茸は副鼻腔の粘膜が腫れて鼻腔に出てきたもので、大きくなると鼻腔内をふさいで、鼻づまりを生じることとなります。
副鼻腔炎の治療
小さなお子さんは、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いです。しかし、副鼻腔の発育や免疫機能の発達により10~15歳頃には副鼻腔炎を起こしにくくなると言われていますので、それまでは悪化させないようにしっかり治療されることをお勧めします。
耳鼻科での処置
鼻処置
副鼻腔炎の治療で大切なのは、「鼻の中に鼻汁をためておかないこと」です。
薬液を噴霧したり塗布したりして、鼻腔および中鼻道(副鼻腔と交通する部位)を拡げ、そのうえで鼻汁を吸い取ります。
特に乳幼児は鼻を上手にかむことができませんし、大人でも鼻づまりが強かったり鼻汁がねばっていると充分にかむことができませんので、大切な処置です。
ネブライザー療法
霧状にしたお薬(抗生剤や炎症をおさえる薬剤)を鼻から吸い込んで、鼻腔や副鼻腔に作用させます。
お薬が充分に到達するように、鼻処置をしたうえで行います。
お薬
黄色い鼻汁が出ている急性副鼻腔炎や、慢性副鼻腔炎の症状が急激に悪化した時には、抗生剤を使用します。
この他、症状に応じて、痛みを和らげる消炎鎮痛剤や、炎症を緩和させる薬(粘膜機能改善剤・消炎酵素剤など)を組み合わせて使用します。
アレルギー性鼻炎を合併する場合にはその治療も重要です。
慢性副鼻腔炎では、マクロライド系の抗生剤を少量長期に使用することで局所の免疫機能を向上させる治療を行います。
手術
慢性副鼻腔炎では病気の程度により手術をおすすめします。
とくに鼻茸が高度で鼻づまりがひどい場合には症状の改善のためには手術が必要です。
手術には病状によりいくつかの方法がありますが、現在一般的に行われているのは、
内視鏡を使って鼻内から行う内視鏡下副鼻腔手術(ESS)です。
以前と同様に入院は必要ですが、術中の疼痛・術後の顔の腫れなどの患者様の負担が少なくなっています。急性副鼻腔炎でも眼や頭蓋内に合併症を起こした場合には早急な手術による排膿が必要となる場合があります。
当院では手術を行っておりませんので、ご希望の方には、医療機関をご紹介いたします。