中耳炎
「中耳炎」と言われると「急性中耳炎」を思い浮かべて、耳が痛くなるものと思われがちです。
たしかに、風邪の症状があるときに耳が痛くなれば急性中耳炎の可能性が高いです。しかし、中耳炎以外にも耳が痛くなる病気がありますし、耳が痛くならないまま進行する中耳炎もあります。
耳の構造は大きく「外耳」「中耳」「内耳」に分かれますが、この「中身(鼓膜とその奥の鼓室)」に炎症が起きたり、液体がたまる病気が中耳炎です。
急性中耳炎
風邪などをきっかけに鼻咽頭に感染した細菌やウィルスが、「耳管」という鼓室と上咽頭(鼻の奥)をつないでいる管を経由して中耳に入って炎症を起こすことで発症します。
大人でもかかることがありますが、小学生までの子どもに多い病気です。
子どもの方が、太く短く、傾きが水平に近いため炎症が波及しやすいという耳管の構造上の特徴や、未熟な免疫力、集団保育などの環境要因が関係するといわれています。
数日~10日程度で治ることが多いですが、長引いてしまったり、何度も繰り返したりすることがあります。
症状
耳の痛みや発熱、耳だれなどの症状があります。
痛いと言えない乳幼児では、泣いたり、耳をさわったり、機嫌が悪くなったりします。
耳が聞こえにくくなったり(難聴)、耳がふさがった感じ(耳閉感)も起こりますが、
小さい子ほど自覚することは少ないので、注意が必要です。
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)
耳痛や鼓膜の発赤などの急性炎症の症状や所見を伴わずに、中耳の鼓室腔に液体が貯留する中耳炎です。急性中耳炎後の中耳貯留液が残存することが原因となることが多いですが、明確な急性中耳炎症状を認めずに滲出性中耳炎になることもあります。
鼻咽腔と鼓室をつなぐ耳管の機能が良くない状態が続くと、換気が不十分となり鼓室腔が陰圧になり粘膜からにじみ出てくる液体(滲出液)が貯留するようになります。
耳管機能が未熟な乳幼児や、加齢に伴い機能が悪くなる高齢者に多いです。
子どもの中耳炎は、耳管機能が発達したり、風邪にかかりにくくなることで、10歳くらいまでには起こしにくくなると言われています。しかし、軽度ではあっても難聴が持続することは、決してよいことではありませんし、乳幼児では言葉の発達にも影響しますので、その都度きちんと治療しましょう。
症状
耳の痛みや発熱はありませんが、難聴・耳閉感・自声強聴(自分の声が耳に響く)などの症状があります。
ただ、乳幼児ではこれらの症状を自覚することは少なく、聞こえが悪い(音や呼びかけへの反応が悪い)、聞き返しが多い、耳をよくさわる、頭をかしげるしぐさをする、などで気付かれることもありますし、耳鼻科を受診した際に偶然発見されることも少なくありません。
慢性中耳炎
鼓膜に穿孔(あな)がある「慢性穿孔性中耳炎」をさすことが一般的です。
急性中耳炎を繰り返したり、治りきらずに、穿孔が閉じずに残ることで生じます。
痛みはほとんどなく、耳だれや難聴の症状がありますが、程度は様々です。
この他にも、癒着性中耳炎・真珠腫性中耳炎・好酸球性中耳炎などがあります。
中耳炎の治療
中耳炎には、耳管(じかん)が関係します。耳管というと聞きなれませんが、新幹線がトンネルの中に入ったり、高速エレベーターに乗ったりした時に、耳がポーンとなるのを調整してくれる大切な器官です。
この調子が悪くなってしまう原因に、風邪(特にこども)・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎などがあります。中耳炎の治療ももちろん大切ですが、これら鼻やのどの病気の治療も重要です。
耳鼻科での処置
耳処置
耳だれがある場合には、拭きとったり、吸いとったり、洗い流したりします。
耳だれをそのままにしておくと皮膚がただれてしまって湿疹になりかゆくなることがあります。
外側だけで結構ですので、拭きとってあげてください。
耳管通気
滲出性中耳炎の場合は、鼻から耳管を通して耳へ空気を送り、鼓室の中の圧力を正常に戻します。
鼓膜切開
急性中耳炎で耳痛が強かったり発熱が続く場合、滲出性中耳炎で長引く場合に、麻酔(薬を鼓膜にしみこませる)をしたうえで鼓膜に小さな穴をあけて、たまっている液体を吸い出します。穴は数日で自然に閉じます。幼少児の滲出性中耳炎では、たまっている液体が粘性であることが多く耳管の通りをさらに悪くするため、改善傾向がなければ一度液体を抜いたほうが早く治ると思われます。
鼻処置
鼻腔を拡げる薬をスプレーしたり、鼻汁を吸い取ったりします。
霧状にしたお薬を吸い込む、鼻ネブライザーも行っていただきます。
お薬
急性中耳炎でごく軽症の場合や滲出性中耳炎で鼻症状がない場合には、投薬せずに経過をみることもあります。急性中耳炎で膿が貯留している場合や滲出性中耳炎でも膿性の鼻汁を伴う場合には、抗菌薬(抗生物質)が使われます。その他、症状にあわせてお薬を服用していただきます。
その他
滲出性中耳炎がなかなか治らない場合は、次のような治療も検討します。
鼓膜換気チューブ留置術
鼓膜切開してあけた穴にチューブを挿入して換気を行うことにより、中耳腔の陰圧が解除され滲出液がたまらなくなります。
アデノイド切除術
アデノイドは上咽頭(鼻の奥)にある扁桃腺で、これが大きいと耳管機能に影響します。